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小説

#OCTOPATHTRAVELER #OlPri

夜に滞る

致す前の駆け引きのような話です。
ゲームの特性上、時間軸は関係無いようにしたつもりなのでお好きな解釈でどうぞ。
オルベリクの騎士(剣士)と男の両方の顔が書きたかったやつです。
オルベリクでゲームを始めて、最初に接触したのがプリムロゼだったので「見知らぬ大人男女の2人旅とは、なんというエロいゲームだ!けしからん(いいぞ)」とか思ってしまいました。
そんなCEROレベル爆上げな2人が好きです。

1

 二人で呑みたい、とプリムロゼから声を掛けられたのは初めてだったから、明確に、彼女が誘っているというのが、鈍い俺にも分かった。

 仄暗い酒場、まだ最初のグラスも空けぬというのに、横に座ったプリムロゼの右手があからさまに俺の右手に重ねられる。
 そのまま払いのけず気に留めてもいない振りを装ったら、滑らかな指先が官能的な動きで俺の手の甲の血管をなぞった。

「ねぇ、貴婦人のお相手も騎士の務めのひとつ、って本当?」
「そういうこともある、というだけの話だ…俺には本意でない忠誠や愛の言葉を口にするような真似は出来ん」
「ふぅん、貴方みたいなひとでも何方かの寵愛を受けたのかしら、と気になったのだけど……」
 目の前の男をからかうのが随分と楽しいらしい。
 俺の好意に気付いて、なお、駆け引きめいたやり取りを仕掛け、翻弄する。
 そのくせ、気持ちを口に出させないし、出さない。
 心は差し出さない。
 二人の関係に名前を付けさせない。

 だから、俺も弁えた。

 旅を共にした間に知ったプリムロゼの情の深さを思えば、大方、手を汚してしまった自分は幸福に手を伸ばしてはいけないと、心に枷をし、相手をそれに巻き込むまいとしているのだろう。

 歪な優しさだ。

 とはいえ、それだって俺の勝手な憶測でしかない。プリムロゼは口に出さないから。

 手練手管に弄されているだけかもしれない。
 しかし、惚れた女のそれなら、それでもいいとさえ思ってしまう。

__随分と容易い男になったな。

 目の前の女に焦がれ、振り回され、不甲斐ない自分を知らしめられたことに、自嘲的な笑みが零れそうになる。

 プリムロゼに悟られまいと、拘束されていない左手でグラスを傾けた。
 こんな夜は、横の女の挙動がいちいち気になって、酒の味なんて分かるわけがない。

 飲み干したあとで少しだけ手の中で遊んだのちグラスを置いて、所在のない手で頬杖をつき、されるがままになっている右手に視線を落とした。
 俺の手の甲の上で彼女の指が尺取虫のように踊り続ける。

「知りたいわね。武骨な貴方が、どんな風に女を抱くのか……」
「そんなことを知りたいのか……おまえは」
 ほんの少しの沈黙のあと、俺の指と指の間に滑り込んできた尺取虫を挟み込んで黙らせると、彼女はふふっと笑った。
「いい加減、冗談では済まなくなるぞ」
「いつだって勝手に冗談にしてきたのはあなたの方じゃない……」
 プリムロゼが怒った顔を俺に向けた。にもかかわらず、戯れるよう肩にもたれる。

「揶揄いはしたけど、嘘は吐いたこと無いわ」

 二の腕にしなだれかかった彼女から服越しに伝わる体温と重さが、普段俺をからかって絡んでくるときの軽さとは違うから、状況も手伝って、本気で自分を求めてくれているのだと都合よく解釈をしてしまう。

 いいのか、俺で。

 こんな時に上手い口説き方も浮かばない男で。

 切り出し倦ねているとプリムロゼが重ねた手を剥がし、俺のと同様に空っぽになったグラスにわざとらしく触れた。

「……俺の部屋で、飲み直すか?」

 俺の口を吐いて出たそれは、誘い文句というよりは正解を確認するようなぎこちなさではあったが、それでも彼女は、上出来ね、と言わんばかりの笑顔を俺に寄越した。



2

 店を出ると、脇道に腕を引いて彼女を寄せ、口付けた。
 プリムロゼの背丈に合わせようと腰を屈めると、彼女も同様に背伸びをして両の腕を俺の首に回す。
 抱きしめようか迷った腕は結局彼女の細い腰に回した。プリムロゼの力の入った爪先が地面とサンダルを摩擦して、じゃりっと音を立てる。
 触れ合っていた唇はすぐに離れ、プリムロゼが、ふ、と小さく息を吐いて照れたように俯く。
 その一瞬だけで俺はまた煽られてもう一度、食んだ。
 触れたまま微かに動かして、感触を楽しんだあと、隙間から舌を差し入れると彼女も舌で迎えてくれた。
 混ざり合う熱い吐息が夜の冷たさを相殺する。
 感触に没頭していると、首に回されたプリムロゼの両腕がほどけて、落ちまいと俺の肩にしがみついた。
 それでも絡まったままの舌は健気に俺に応え、時折切なそうな吐息を漏らす。

 久しぶりに抱く女が、惚れた相手で、しかも極上とあっては、とめどなく溢れてくる男の欲望に抗うことなど出来そうになく、今すぐここで繋がってしまいたい衝動を理性で堪え、絡まったプリムロゼの舌を唇で吸いながら解放すると、蕩けた上目で俺を見つめた。

 性急だと咎められた気持ちになって、謝る代わりに抱きしめると、俺の腕の中に埋められたプリムロゼが
「まだまだ夜は長いわ。焦らず楽しみましょう」
 と優しく笑った。



3

 宿に到着すると、扉が閉まるのと同時に、もう一度抱き合って、キスをして、縺れ合ったままベッドになだれ込んだ。

 上着を脱いでランプを灯すと暗い部屋に二人の姿だけがぼんやりと浮かんで、これから耽る行為を嫌でも思い知らされる。
 愛しい女の身体に優しく触れたい願望と、滅茶苦茶に乱して壊してしまいたい欲望が拮抗し、情緒が脅かされる。

 寝かせたプリムロゼに覆い被さるようにして彼女の視界を遮ると、プリムロゼが自分で服を脱ごうとしていたので、させてくれと言ったものの、首飾りを外すのに手こずると、クスッと笑って
「自分でするわ」
と、俺の腕の中からすり抜け身体を起こし、慣れた手付きで、さっと外した。
 彼女はベッド脇のサイドテーブルにそれを置くと、やおら立ち上がり、テーブルに放っておかれていた酒をグラスに注ぎ、それを持って雑に寝転がる俺の横に腰掛けた。
 そして空いている方の手で器用に結い髪を解くと、頭を小さく左右に振った。柔らかい髪と、プリムロゼの纏う香りが広がって、普段の彼女とはまた違う顔を魅せる。
 一連の所作が自然で美しく、誰かの躾を感じて少しだけ胸がちりっと焦げたが、結局どんな彼女の顔も、俺が解いて、乱していくのだと思えば、また昂ぶる。

 差し出されたグラスを
「毒でも入れたか?」
 と、柄にもなく目の前の女が言いそうな冗談を先回りして口に出して受け取る。
 下だらなくて、二人とも鼻で笑う。
 渡されたグラスを煽って手の内に返すと、プリムロゼが俺から返された液体を数口飲んで潔白を証明した。
 グラスをサイドテーブルに置こうと身体を捻って俺に背を向けたので、腕を腹に回して剥き出しの白い背中に口付けると、んっ、と無防備な甘い声が漏れた。
 想像していた姿とは違って、初心な反応を返してくるのが愛らしい。
 自分から発せられた声を恥じたのか、急に振り返って、誤魔化すように俺を睨んだが、全然怒ってはいない。
 プリムロゼの腕を引いて俺の横に寝かせ、彼女の顔にかかった髪を指で除けて頬を撫でると、目を閉じた。瞼、頬、とキスを落とす。

 戯れを許されていることが、行為だけを許されるよりも嬉しいのは、好意を実感出来るからだと思う。

「こんな私でも、白状すると…誰かに抱いてほしいと思ったのは初めてだし、丁寧にされるのは…慣れていないわ」
プリムロゼが俯いて、戸惑いを含む声で言う。

「今夜のおまえは…素直だな」
「…何よ、可笑しい?」
「…愛しい」

 プリムロゼは一瞬、何故口に出してしまったの、とでも言いたそうな顔で俺を見たが、すぐにまた俯いた。

「…酔っているから、素直なの」
 プリムロゼは嘯く。
 普段の酒量に比較して今夜はふたりとも酔うほどには飲んでいない。
 なるほど、先程渡された酒もそのための芝居だったわけか。

 いじらしい。

 慈しみたいのに追い詰めたい相反する気持ちが同時に湧き上がって、それを伝えたいと思っても愛しいとしか出てこない。
 そして、どれだけ俺が自分の気持ちを口にしようともやはりプリムロゼは受け取らないのだろう。

 なので、言葉の代わりにそっと彼女の手に口付けた。
 指の一本一本、つくりを確かめるように、口付けた。
 そうやって、ひと通り堪能し終わったところで、ただ受け入れてくれていた指が俺の頬を撫でた。

 愛の言葉を言いたい俺と、言わないでと訴えるプリムロゼの視線がぶつかる。

 言葉なんて要らない、と窘めているのだろうが、男の本音を騎士の建前で隠してこの日まで共にきたのだから、最後までそれを貫かせてくれ。

 矜持、といえばおこがましいが。

「…プリムロゼ、赦しをくれるか」
これからも、貴女に永遠の忠誠を誓うことを。
愛を、捧げることを。

「…ずっと、抱きたかった」
おまえに惹かれて、おまえの側で、俺は、ただの男だ。



end.畳む

小説

『ナナブンノイチの小さな罪』
プリムロゼ視点。えっちなことをしているだけの短い話、同人誌の没ネームを小説の体裁にしたもの。
未成年者閲覧禁止
#R18 #NSFW #OCTOPATHTRAVELER #OlPri

最初に寝たときに、ぎこちなかったのは、女に慣れていないからじゃなくて、自分に随分と気を使ってくれていたからだと、彼が遠慮をしなくなってようやく、気が付いた。
 どうすれば、わたしが気持ちいいのかばかりを優先して、反応を気にして触れる箇所や緩急を変えていることが分かったのも、ことの最中に考える余裕を無くすくらい、し尽くされてからだ。
「今まで、どんな人と、こんなキスしたの……?」
 溶けてしまいそうなキスを交わしたあとで、ふと、意地悪心で聞いてみる。
「お前と出会ってからは、誰とも寝ていない」
「それは……そうかもしれないけど」
「過去は、変えられんぞ」
 オルベリクが困った顔で笑う。経験が刻まれた皺や傷まで愛しいのは、彼が好きだという自覚と組み合わさって、何と勝負している訳でもないのに、敵わないと降伏してしまう。
「だって、気持ちいいの。気持ちいいから、他の人ともこんな風にしたのかと考えてしまうの」
「……俺も、おまえに“仕込んだ”奴が許せない。けれど、自分が最後の男だという自負で抱いてるし、おまえ以上に悦い相手なんて過去にも先にもいない。それでは納得出来ないか?」
「んー……」
「やれやれ」
 どうしようもない駄々をこねている自分に呆れつつ、過去のオルベリクの顔も知らない相手に嫉妬してしまうのも本音だから、どうしようもない。それで、わたしは、彼の過去を受け入れるために、してほしいことを提案する。
「オルベリク……気持ちいいか?って聞くんじゃなくて、あなたにも、気持ちいい、って言ってほしいの。そうしたら、許せる……気がする。いつも優しくされて嬉しいけれど、わたしもあなたを悦くしてあげたいの。だめ?」
「……意識すると恥ずかしいが、お前が喜ぶなら」
「……うん」
 強請ったあとで、もう一度、舌先を絡めて唇を寄せた。キスをしながら、胸に手を伸ばされ、大きな手に、やわやわと形を変えられる。
「……気持ちいいな」
「触れているだけなのに?」
「この柔らかさも、匂いも、味も、おまえの全てが俺だけのものだと思えば、堪らなく愛しくて、気持ちいい」
「……っ」
 指先がわたしの先端を撫でる。お返しに、オルベリクの膨らみに手を伸ばす。まだ完全に勃ちあがっている大きさではないけれど、掌に熱は伝わってくる。すりすりと、服の上から優しく撫でる。
「ねぇ、気持ちいい?」
「気持ちいい……」
 鼻先と鼻先を合わせながらお互いに触れ合う。吐息も触れ合う距離で、キスしていないのが却ってもどかしいくらいの位置でことばを交わす。
「……ひ……ゃん……!」
 オルベリクの指先がわたしの先端を、ぴんっと弾いた刺激でつい声が出てしまう。つられて伸ばしていた手がきゅっと彼を握ってしまう。
「……う」
 オルベリクがかわいらしく小さく呻いた。さっきよりも硬度が増している熱を帯びた竿をそのまま布の上から優しく扱く。
「気持ちいい……?」
「成程、聞かれるのはこんな気分なのだな」
「あ」
 上擦った声で窘められる。自覚していなかったけど、そういえば今日はわたしがオルベリクに伺ってばかりだ。
「よし、分かった……余計なことなんて考えられなくなるくらい、おまえが満足するまでしてやる」
 オルベリクが耳元で囁く。その言葉の意味を考えようとするのに、容赦なくいいところばかりを攻められるから頭が働かない。おかしい、おかしくなる、もうなっているのかもしれない。
 服をずらされて直に触れられる。
 自然と排出される音とも声ともつかない何かは放っておく。与えられる官能にただ溺れる。
 ただ快楽に耽るのを許し合う安心感に包まれながら。
畳む

小説R18

 

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